「なぁに?また喧嘩したわけ?」

「うん、だから慰めて?」

「まぁたそんなこと言って・・・」


呆れた風に溜息を吐くは、今日も綺麗だ。
俺と銀時とは幼馴染ってやつで、ガキの頃からずっと一緒だった。
いつだって3人一緒だった。
高校を卒業してからはそれぞれの道へと分かれていったが、変わらず交流は続いていた。
ただ一つ変わったのは、銀時とが付き合ってるということ。


・・・」

「はーいストップー」

「・・・何だよ」


唇と唇が触れようとした瞬間、の手によってそれは遮られた。
不満げにを見ると、は普段と変わらず、まっすぐ俺を見つめていた。


「金時はさぁ、あたしだからじゃなくて、銀時のだから欲しかっただけでしょ?」

「・・・・・・」

「悪いけど、そんなんじゃあたしは落とせないよ」



「金時、好きだよ」

「あぁ」

「だけど、ごめんね。あたしは、銀時が、すき」

「あぁ・・・知ってる」

「うん」


行き場を失った手が妙に虚しくて、無造作にポケットに突っ込んだ。
立ってるのもなんだから座ろうとに言われて座ったが、落ち着かない。
くだらないテレビを見ているの横顔が無性に愛しくて、手を伸ばしかけて、また戻す。

先刻、に言われたことを思い出す。
『銀時のだから欲しかった』
確かに、俺は昔からやたらと銀時のものを欲しがった。
銀時の玩具、銀時の絵本、銀時の鉛筆、銀時の彼女。
そんなことを繰り返す俺を見て、はお揃いのを買えば良いじゃないかとよく言っていた(彼女は無理だが)。
は、俺の銀時に対する異常なまでの執着を知っていた。
だけど、俺は


「じゃあ、またね」

「あぁ」

「仕事、頑張ってね」


ぱたん、と扉が閉められて、俺は一人になった。




欲しいと望みながら、


絶対に手に入れられは


しないことを僕は知ってる




「俺は、まじでお前が好きだったんだけど、な」

誰も居なくなった広い部屋でぽつりと呟いた一言が、やけに部屋に響いた。



080129