深夜。
デジタル時計の文字は、午前3時を表示していた。

昨夜、早くから寝床に潜ったため(というか強制的に)、普段から夜更かしな私は変な時間に目が覚めてしまった。
その原因である恭弥は私の隣で、すやすやと寝ている。
眠っていれば可愛いのに。
彼はとてもとても綺麗な顔立ちをしていて、私はいつもそれを羨ましく思っている。
そして彼の艶のある漆黒の髪もまた、その対象なのだ。
さらさらと流れる髪を梳くと、少し声を漏らすも恭弥は起きなかった。
私は母親が子供にするように撫で続けた。
触れた素肌から、互いの温もりを感じる。
それにしても、人肌の温もりとやらでは物足りず私の肩は冷え切っていた。
春先とは言え、まだ朝は肌寒く布団は手放せない時期だ。
身を捩って布団を掛け直そうとした時、掠れて色っぽくなった恭弥の唸り声が聞こえた。


「・・・なに、してるの」

「ごめん、起こしちゃったね」


さむい、と小さく呟くと、恭弥は温もりを求めるように私を抱き寄せた。
恭弥の体も冷えてしまったらしく、頬に当たった肩がひやりと冷たかった。
足元に追いやられてしまった布団を引き寄せ、肩までしっかりと掛けてやる。
恭弥は、今度は強く私を抱きしめた。
私は唇を噛み締めるので精一杯で、震える手を握り締め、恭弥の胸に顔を押し付けた。
数時間後に、目の前の最愛の人は生死を懸けた危険な任務へと赴く。
涙は、死んでも流さない。

今は、ただこのままで。




残り香と貴方の温もりと、
(あぁ、やっぱり貴方は行ってしまった)(冷えたシーツが、痛い)


090324