セックスは、自傷行為に似ている。


そう言うと不謹慎がられるだろうが、けれど、実際そうなのだ。
私にとっては。
だから、きっとこんなに痛いのかもしれない。


(好き、なんだけどなぁ・・・)


なんで、こんなに締め付けられるんだろう。こんなにも、不安定になるんだろう。
前後不覚に陥ったように、私は狼狽えてしまう。ぐちゃぐちゃになってしまう。
恭弥とのセックスは、確かにあんなに幸福なのに、終わった後のあの何とも言えない絶望感はいったい何なのだろう。
ふいに、氷水を掛けられたみたいに強引に現実に引き戻される、あの感覚は。

身も心も、満たされている、はずなのに。


?」

「、なに・・・?」

「どうしたの、不細工な顔して」

「・・・この顔は元からですー」


ぼすっと、音がするくらい勢いよく枕に顔を埋めた私の頭を、恭弥がくつくつと笑いながら、撫でる。
恭弥は、普段あんなに周りの人間を威嚇しまくっているというのに、何故か私のことはベタベタに甘やかしてくる。
それが、なおさら「特別」なんだと錯覚してしまう。期待してしまう。


けれど、その言葉が恭弥の口からは絶対に出てこないことを、私は知っている。
だから、こんなにもやるせなくて哀しい。

どんなにもがいてもどんなに求めても堂々巡りで、決して終点がない。
走っても走っても、その先に光はない。届かない。
それはまるで底なしの沼のように、ぽっかりと大きく口を開けて、ほの暗い闇へ私を誘おうとしている。


『愛してる』


嘘でも、そう言ってくれればいいのに。
そうしたら、私も潔く騙されるのに。
それが、ゴールだって思えるのに。


関を切ったように溢れ出る涙は、もはや自分の力では止めることが出来なかった。
それが、悲しくて出るのか何なのかも、どうでも良くなっていた。
ただ、そこにはすでにどうしようもない事実が横たわっている、それしか、上手く機能しない頭には認識できなかった。
ひっそりと嗚咽を噛み殺して、布団に深く潜る。
隣にいる恭弥はすでに寝息を立てていたが、その時驚くほど優しく、私の肩を抱いて寄せた。
それは、本当に、無垢な顔で。
まるで、追い打ちをかけるように。





崩されたい欲望

(そうやって、この関係をぶち壊してくれたらいいのに)


130119