もしかしたら時間が無いのかもしれない。 そう思ったのは、つい最近のことだ。 何だか疲れやすいし、食欲もあまりないし、兎に角眠い。 気が付くと私はどこでも寝てしまっている。 寝ることは、良いことだとは思うんだけど。 だから、今何時なのか全く分からない。 今分かるのは、何故か任務に出ていたはずの恭弥が私の目の前に居るということ。 いつ帰って来たんだろう。 「また、痩せたんじゃないの?」 「うん。何だか最近、調子が悪くて」 「そう・・・だったら大人しく寝てなよ」 恭弥は私を軽々と抱え、寝室へと向かった。 あぁ、いつ帰って来たのか聞こうと思っていたのに、また忘れてしまった。 恭弥が帰って来たら言いたいことがいっぱいあったはずなのに、どうしてだろう。 ちっとも思い出せない。 頑張って頑張ってたくさんを思い出そうと考える私の頭を、恭弥は優しく撫でてくれた。 そうしたら、どうだろう。 思い出せないことなんてどうでも良くなってしまった。 だって、恭弥は目の前に居るんだもの。 寝室へ向かう間、恭弥の香りとゆらゆら揺れるかんじにまた眠気が襲ってきた。 いやだ、まだ寝たくないの。 折角帰って来た恭弥ともっと一緒に居たくて、起きていたいと思う。 スーツを握ると、恭弥はまた頭を撫でてくれた。 「あまり、心配させないで」 恭弥は眉を寄せて、苦しそうに呟いた。 そんなに悲しそうな顔をしないで。 そう言って、彼の頬を撫でてあげたかった。 でも、できなかった。 「ごめんね」 その言葉が何についての謝罪なのか、果たして本人に伝わったかは、定かではない。 ベッドに寝かされた私は、肩までしっかりと布団を掛けられてしまった。 そして額にかかった前髪を払うと、そこに触れるだけのキスをしてくれた。 「おやすみ、」 |