「おかえり、恭弥」 「ただいま、」 久し振りに見た恭弥は、少し疲れているようだった。 それもそうだろう。 彼にしては珍しく長期(と言っても2週間)の任務で、イタリアを離れていたのだ。 普段、彼は何故だか3日以上かかる任務は引き受けない。 前にみんなに聞いたことがあるけど、笑うだけで誰も答えてはくれなかった。 上着を受け取り、クローゼットに仕舞おうと一歩踏み出したのだが、それは強い力によって遮られた。 そして何やら背中に、熱を感じる。 「恭弥?」 「・・・いいから、じっとしてて」 恭弥に、後ろから抱きしめられていた。 子供のように抱き付く恭弥を振り解くことなどできずに、じっとしている。 なんだか今日の恭弥は甘えん坊だな、と思ったけど甘えたいのは自分も一緒だ。 こんなに長い間離れていたのは、久々だったから。 恭弥の任務はいつも危険なものばかりで、大丈夫とは分かっていても、どうしても私は心穏やかに過ごすことなんてできなかった。 でも、こうして恭弥の香りに包まれて、それだけでもう私は安心してしまう。 時折首をさらさらと掠める彼の髪がくすぐったくて首を竦めると、くすくすと笑い、キスを落とす。 そんな彼がどうしようもなく愛おしくて心地よい温もりに身を任せていると、後ろから腰に手を回される。 それがどういうことなのか、経験上、分からないはずがない。 普段より少し熱っぽい唇が首筋を這い回り始めたところで、いよいよ静止の声を掛けた。 「恭弥・・・ダメ、だってば」 しかし、それを黙って聞くような男ではない。 腰に回っていた手は、いつの間にかゆるゆると行動を開始していた。 くすぐったさが次第に違うものへと変わる頃、私は堪えられなくなり恭弥を引き寄せる。 綺麗な瞳がまっすぐ私を見つめ、形の良い唇は弧を描いた。 「今夜は、寝かせないから」 そんなことを言われたら、ダメだなんて言えない。 |