あたしは恭弥のことが好きで好きで好きで、本当に好きで、世界で一番愛してる。
いつもいつも頭の中は恭弥が占めていて、寝ても覚めても食事中も任務中も、ずっとずっと恭弥のことが頭から離れない。
恭弥に会えない日は1日中無気力で、何も手につかない(だから皆はなるべく考慮してくれる。有難いことに)。
もういい歳なのに、自分でも驚くくらい、まるで少女のように純粋な恋愛をしている。
こんなにあたしに愛されてるっていうのに、恭弥はいつだって涼しい顔をしている(あたしが、どんな想いで一緒に居るか分かってるの?)。
どうやったら恭弥にあたしの気持ちがちゃんと伝わるんだろう。

そんなことをモヤモヤと考えていると、前方にその人は居た。
目の前の男はそれはそれは美しくて。
じっと、半ば食い入るように見つめていると、ほんの僅かだけど、でも確かに目を細めてあたしの名前を呼んだ。
それはあたしだけに見せてくれる、とても柔らかい表情だった。
あぁ、そんな顔をしないで。
でないと、あたし、


「・・・で、。これは一体どういうわけ?」

「無性に、恭弥さんを犯したくなりまして」

「ふぅん」


いつも見上げている恭弥を見下ろすというのは、なんだか変な気分だ。
何ていうか、ゾクゾクする。
恭弥の白く綺麗な顔を指でゆっくりと愛撫するようになぞると、ぴくりと、彼の体が動いた。
そのまま指を下に動かし、柔らかな唇に触れる。
この可愛らしい唇が、自分の唇に当てられたり時には大変なことをしてくれるなんて、とても想像できない。
輪郭に沿って指を滑らすと、紅い舌が指に絡められた。
初めは指先を、そして段々と舌を這わせ、咥え込む。
腹を甘噛みする恭弥はびっくりするくらい艶やかでいやらしくて、思わずその姿に見惚れてしまう。
気が付くとあたしの指は恭弥の唾液でびしょびしょになっていた。
引き抜く瞬間、銀色の糸を引いた。
ちらりと視線を彼に向けると、頬が少しだけ色付いているのが分かった。
それを見たあたしは、なんだかとても嬉しくなってしまう。
理性なんて、とっくに焼き切れている。
あたしは別に恭弥と違って変な性癖なんてないと思ってたのに、あれ、おかしいな。
本人はというと、形の良い唇を吊り上げて意地悪く笑っていた。
あぁ、この顔はなんかやばい、かも。


「ねぇ・・・この僕を待たすとは、随分良い度胸してるね」

「え・・・?」

「どうなっても知らないからね」


ねぇ、あなたに食べられるなら、本望なの。




溺れた サカナ


090330