眠い。 もの凄く眠い。 今日が何月何日何曜日で、今何時なのかも全く分からない。 なぜなら私はここ数日、自室に篭っているのだ。 引きこもりではない。断じて。 もはや水も同然となりつつある修羅場のお供コーヒーを飲もうとマグカップに口を付けたが、中身がない。 そう言えばボスや獄寺に、空きっ腹にコーヒーは胃に良くないから止めろって言われてたっけ。 でも、これがないとダメなんだよね。 コーヒー中毒っていうのかなぁ・・・。 何だか、麻薬みたい。 まぁともかく、入れに行くのは面倒だけどないとやっぱり無理だ。 仕方がない、また入れてくるかと立ち上がったところで、誰かが部屋に入って来た。 背後の常人らしからぬ空気と、ふわりと香ったその馴染みのある匂いで、誰かは分かっているのだけど。 「、顔色悪いよ」 「恭弥、ひさしぶりー」 「ちゃんと寝てるの?」 なぁにこの人、可愛い恋人に会って第一声がそれ? しかも、全然人の話聞いてないよね。 昔からそうだけど。 言葉のキャッチボールって知ってるのかな。 でも、そう言われてみれば、確かにあまり寝ていなかったかもしれない。 私は普段デスクワーク専門という訳ではないけど、恭弥やボスが不在だったために片付けなければならない雑務が山のようにあった。 そのありえない量に呆然としたけど、帰って来てこんなに仕事が溜まってたら可哀想だから私がやることにしたのだ。 本当は骸に押し付けようとしたんだけど、上手く逃げられてしまった(こんな時に限って役に立たない)。 でも、クロームが今日も可愛いから良しとしよう。 そんなことをぼーっと考えていると、ねぇ人の話ちゃんと聞いてるの、と小突かれた。 まさかそれを恭弥に言われるとは・・・。 恭弥に言われるまで気付かなかったと笑うと、恭弥は呆れたと溜息を吐いた。 「おいで、」 ふわりと、かすかだけどそれは確かに私だけに向けられたもので。 それだけで私はどうしようもなく、この人を愛おしいと思ってしまう。 書類をデスクに置き、恭弥が座るソファーへ向かう。 隣に腰掛けると、まるで子供にするようにぽんぽんと頭を撫でられた。 私はこれをされると、つい甘えたくなってしまう。 それがなんだか可笑しくて笑っていると、君はいつまで経っても子供だねと言われてしまった。 恭弥は、昔も今も優しい。 頭を撫でられているうちに、安心したということもあってか、私は段々と瞼が重くなってきたのが分かった。 恭弥は何も言わず、私とは違う、そのしっかりとした肩を貸してくれた。 あぁ、でも。 私、恭弥にまだ言ってないことがあったんだ。 「おかえり」 それがちゃんと声になっていたかは分からないけど、どうやらちゃんと伝わったようだ。 恭弥が、私の完全に閉じてしまった瞼に小さなキスをしてくれたから。 |