当たり前のように居て。 当たり前のように僕の隣で笑っている。 それが、永遠に続くと思っていた。 それなのに、どうして。 どうしてなの、。 あの頃のおそろしく愚かで浅はかな僕は、世界の全てが自分の思うままに動くものだと錯覚していた。 何もかもが手に入る、と。 そして、彼女の心が次第に離れていってしまうなんて夢にも思わなかったんだ。 でも、普通に考えればそれは当然のことだった(気付いてあげられなかった、けれど)。 僕・・・はともかく、彼女はごく普通の中学生で、つまり、遊びたい盛りだった。 それを、デートもしない、ろくに会話もしないのでは、に嫌われてしまっても無理はない。 今思えば、は果たして本当に僕のことが好きだったのだろうか。 それすらも危ういほど、僕はに対して恋人らしいことなんて何一つしてあげられなかった。 今となっては、もうどうしようもないけれど。 本当に愚かなのは、失ってからその大切さに気付いた、ということ。 「・・・本当に、愚かだね」 並盛に戻って来てしまうのは、ここに来ればまたに会えるんじゃないかって、そう思ったから。 自分でも女々しいと思う。 だけど、何故だかそうせずには居られなかった。 しばらく何をする訳でもなくぼおっとしていたのだが、ふと、人の気配を感じた。 足元に、陰ができていた。 見上げるとそこには、 「・・・?」 「きょう、や?」 居るはずのない、人。 一瞬、会いたさのあまり幻覚を見てしまったのかと思った(おまけに幻聴も)。 「私、考えたの」 「・・・?」 「あの頃の私は、すごくすごく子供だったって」 夢、なのか。 会いたかったが、今目の前に居る。 彼女は自分の記憶の中の人より幾分か女性らしく、それでも以前と変わらずどこか可愛らしい。 あぁ、本当に僕はこの人が愛おしくて堪らないんだ。 そう分かると、思わず笑みが零れてしまった。 「私は、あなたが居なくなってから後悔ばかりしてた」 「・・・それは、僕も同じだよ」 あの頃より女性らしい体つきになったの体を、きつく抱きしめた。 ふわりと香ったの匂いは、昔と変わらない、僕の好きな匂いがした。 もう、離さないから。 ねぇ、これから言うことをちゃんと聞いていて。 あの時言えなかったことを、今なら僕は言えるから。 さぁ、準備はいいかい? |