欠乏している。
そもそも初めは無かったのだから、問題などないはずなのに。
けれども、私は今、所望している。
考えないようにしなくては。
色んなことで頭を一杯にしないと、ちょっとでも隙を作ったらきっと考えてしまうから。
だから一杯にしないといけないの。
はみ出したら、捻じ込んでしまったって構わない。
そうじゃないと、あたしは、



朝起きると、隣は空だった。
それが私にとてつもない絶望を与えるということを、彼は知らない。
彼はあくまで、彼のルールに従って生きているだけで。
そこに私が割り込む余地なんてまるでない。
それは悲しい程に、仕方の無いことだった。

居ない。
もちろん理由なんて分かりきっているのに、それでも不安は拭えない。
それだけで、私の胸の中はぽっかりと穴が空いてしまうのだ。
暗くがらんどうな私の胸は、まるでブラックホールのように全てを飲み込んでしまうようだ。
朝から全く気が滅入る。
考えを打ち消すように頭を振ると、足早に寝室を出た。


リビングに行くと、テーブルの上に置かれた紙が目に入った。
そこには、彼の綺麗な字が綴られていた。
ちゃんと食べるように、夜は遅くなる、と。
一緒に、私が好む菓子類が袋に一杯置いてあった。
彼は、よく私を分かっていると思う。
袋から目ぼしい物を取り出し、もそもそと遅い食事にありついた。


一体、いつからだったろう。
こんなにも私がダメになってしまったのは。


自分で言うのも何だけど、今まで私はかなりまっとうな生活を営んでいた。
一人だって、十分生きていける能力は備えていたはずだ。
それが、今はどうだ?
私は、雲雀恭弥という人間が居なければ、まるで人間として機能していない。


あなたなしじゃ生きていけないなんて。
息をするのだって、辛い。


帰宅した恭弥を見た瞬間、今まで溜まっていたものが一気に噴出した。
ぼーっとする頭の片隅で、何故だか私は何か恭弥に叫んでいるのを冷静に眺めていた。
本当はこんなこと言いたいわけじゃないのに。
恭弥は相変らず表情を崩すことなく冷静に私を見ている。
反論もせずに。
そんな恭弥の態度がまた私の癇に障り、私は今度は泣き始めた。


「きょうやぁ・・・」

、泣かないで」


崩れ落ちる私の体を支えてくれた。
泣きじゃくる私の背中を優しく擦る恭弥の手が温かくて、一層涙が溢れた。
部屋には私の名前を呼ぶ恭弥の声と、私の嗚咽だけが響いた。



泣き疲れた私は、どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
重い体をもぞもぞと動かして上を仰ぐと、恭弥の顔があった。
恭弥は私を抱き締めるようにして眠っている。


私は今でもこの人のことが愛おしくて堪らないのに。
一緒に居れば居るほど、どんどん自分がダメになっていく。
頭と体がバラバラ。
だけどいつだって恭弥はそんな私の側に居てくれる。
どうしてだろう。
不思議と胸の奥がひんやりと冷たくなっていくのが分かった。




君はこんなにも近くにいるのに
(足りないんだ、全然)


090918