今日は、ギルが久々に学校に来た。 来たとは言っても、登校してきたのは3限から、なのだが。 たまたま廊下を歩いていた俺とは、ギルに次の授業は何だと聞かれたので数学と答えると、ギルは物凄く嫌そうな顔をした。 そんなに嫌なら次の授業から出れば良いのにとも思ったが、こいつは本当に数学の授業が嫌いなのだ。 まぁ、俺もそう思っているのだけど、それは敢えて口にしないでおいた。 何しろその授業を受け持つ教師がとんでもなく意地の悪い奴で、おまけに授業もぐだぐだなのである。 ギルは次の授業が数学だと分かると、教室とは反対方向へ向かおうとしていた。 「ー、俺次サボるからアイツに言っとけよ」 「えー折角学校来たんだから授業出なよー」 「・・・だりーんだよ」 が行かせまいとギルの腕をがっしりと掴むと、ギルは隠すわけでもなくあからさまに眉を顰めた。 離せよ、と無言で、普通の女子高生ならば思わず泣き出しそうな睨みを利かせるのだが、は全くお構いなしでギルの腕をぐいぐいと引っ張る。 「仕方ないなぁ・・・じゃあ、このちゃんが特別にギルベルト君にチューしてあげるから、ちゃんと授業出なさい!」 「・・・はぁ?」 「え、いや、だから頑張ってのチュー」 「・・・」 「ギル顔真っ赤ー!かーわーいー!!」 「う、うるせー!」 の爆弾発言により、みるみるうちにギルの顔がまるでトマトのように真っ赤になっていった。 ギルはしばらく口をぱくぱくさせていたが、ふざけたこと言ってねェでさっさと教室行けと言い残し、自分も教室へと走って行った。 何となく、面白くない。 不機嫌丸出しな顔の俺に気付いたのか、がじっと俺の顔を見つめている。 「・・・何?トーニョもチューして欲しかった?」 「なっ・・・!ななな何言うて・・・!?」 言い終わる前に、唇に柔らかいものが触れた。 それはほんの一瞬の出来事でしかも軽く触れるだけだったが、ふわりと香ったの香りで、それがの唇だと分かった。 そして唇が離れた瞬間、頭が真っ白になった。 え、え、え、今、こいつ、キス、した? しばらくぽかーんと情けない顔でを見つめていた俺だったけど、そんな俺に構うことなくすでにの体は教室の方へと向いていた。 「う・そ!トーニョにしかしないもーん」 「え、それって・・・なぁ、!」 「トーニョ!早くしないと授業遅れちゃうよー!!」 そう言って俺の腕を掴み足早に歩を進めるの顔はこちらからは見えないが、その耳がかすかに赤みを帯びていたのを俺は確かに見た。 なんや。可愛ええとこあるやないか、そう思うと自然と頬が緩んだ。 腕に回っていたの手を取り、自分の手をそっと重ねた。 はびっくりしたようにこちらを見たが、やがて何も言わず小さな手でぎゅっと握り返してくれた。 そうして2人手を繋ぎ、ギルに少し遅れて教室へと向かった。 その後、一部始終をアーサーに見られていたらしく(俺が)1ヶ月間からかわれたのは別の話。 やっぱりアーサーは嫌いだ。 |