「ほんっ・・・と、あいつらまじふざけんなし!」 パコン、とペットボトルがいい音を鳴らして壁にぶつかった。 それを見た俺はやれやれと苦笑すると、足元に転がったその可哀想な犠牲者を拾う。 まぁ、その気持ちも分からなくはないが、やはり物を投げるのには感心しない。 そう言おうとも思ったのだが、今の にはかえって火に油を注ぎそうなのでそっと胸にしまっておいた。 はというと、それでもまだ怒りは収まらないらしく、どこかの坊ちゃんと同じようにポコポコ怒っていた。 「まーまー、そんな怒っとると折角の可愛い顔が台無しやで?」 「だってさー」 腹立つじゃんか!と は口を尖らせる。 アヒルのようで可笑しかったので、一応努力はしたものの堪え切れない笑みがつい零れてしまった。 それを見た はさらに機嫌を悪くし、バシリと俺の背中を思いっ切り叩いてきた。 全く遠慮は、ない。 も十分怒り散らしただろうし、そろそろ悪友たちの代わりに弁明をしてやらねばならない。 「せやかて、あいつらも用事があるんよ」 「うん」 「なら、仕方ないやろ?」 「・・・うん」 先程とは打って変わって大人しくなってしまった に、もしや泣いてしまったのではと焦る。 慌てて隣に座る を見ると、彼女は体育座りをして下を向いていた。 白く綺麗な脚をクロスさせ、器用にもぶらぶらと前後に体を揺すっているところを見ると泣いているわけではないらしい。 時折ふわりと捲れるスカートに思わずくらくらしてしまったのは、ここだけの話である。 さらり、さらりと髪が揺れるたびに、甘い香りが鼻をくすぐる。 手持ち無沙汰になった俺は、何となく の頭に手を乗せた。 特に何も言わないので、そのまま彼女の頭をまるで犬にするようにわしゃわしゃと撫でた。 普段なら髪が乱れるだの何だのと文句の一つでも飛んでくるのだが、今日の はされるがままになっていた。 ただ小さく、「ありがとう」と呟いたのが聞こえたので、今度は髪を整えるように優しく撫でてやった。 しばらくの間そういていたら、 がいきなり何か叫んで勢いよく立ち上がった。 突然のことに驚いた俺はなんやねん 、と言おうと思い彼女の方を向いた。 「さーんきゅ!」 「・・・っ!?」 一瞬何が起こったのか分からずぽかんとしてしまったが、次第に頭が動き始めると顔に熱が集まるのを感じた。 に、キスをされたのだ。 頬ではあったけれど。 はフランシスの影響か、元々スキンシップは激しい方だ。 俺とフランシス、ギル、 はいわゆる悪友というやつで、よく馬鹿をやっては怒られる仲である。 だから仲自体は、良い。 恋人では決してないけれど。 もちろん今のに他意はなく、感謝の気持ちを込めて軽い気持ちでやったのだろうが。 それにしても、なんという不意打ちだろう。 はすでに出口へ向かって走って行った。 後にはカンカンカンと、軽快な音が響いた。 「あかんねんなぁ・・・」 |