本日の家事を大体終えた私は、休憩に珈琲を飲みながらソファーでまったり雑誌を読んでいた。
私の1日は、朝ご飯とお弁当を作ることから始まり、その後、洗い物や掃除、洗濯をすることである。
まぁ、専業主婦となんら変わらない日常生活を送っているわけである。
そう狭くはないこの家を毎日ピカピカに保つのは随分と骨の折れる仕事ではあるが、この家の家主に比べれば、なんてことはない。
それに、もう幾度となく冬を迎えたこともあり、今ではすっかり板についている。
そんな平凡な日々を送る私の唯一の楽しみは、この休憩の時間である。
やることをやってしまった達成感と、誰も自分を咎めることもないので好きなだけだらだらできるという安心できる時間なのだ。

雑誌も読み終わりカップも空になったところで、ふと何やら玄関が騒がしいのに気付いた。
それから、バタバタと忙しない足音が近付いて来るのを聞き、あぁ、もうそんな時間かと壁に掛かった時計を見る。
ちょうど、家主が帰宅する時間であった。


ー!今帰ったでー!」

「おかえりー」


太陽のようなキラキラした笑顔のアントーニョが、かごにいっぱいのトマトを担いで帰って来た。
今日もアントーニョは家の前のおっきな畑に行って、大量のトマトを収穫して来たようだ。
よほど会議などがなければ、アントーニョはいっつも畑へ行って1日の大半を過ごしている。
かごを下ろしたアントーニョは、私の居るソファーにやって来ると犬のように飛び込んできた。
これはいつものことなので特別驚くわけでもなく、よしよしと頭を撫でてやる。
そうするとアントーニョは嬉しそうに笑った。
本当に、犬みたいだ。


しばらく今日あった話をアントーニョに聞いたり一緒にまったりしていたのだが、日が大分落ちているのでもうそろそろ夕飯の支度をしなければいけないと思った時だった。
今日は、いつもと何かが違った。
アントーニョの手が、お尻を撫で回しているのだ。


「あかん・・・」

「え?」

「したくなってもうた」

「え、ちょっと、何言って・・・・」

「ええよな?

「で、でも・・・」


別に行為自体が嫌なわけではないのだけど、だってもう夕飯の準備をしなければいけない時間だし、アントーニョが採ってきたトマトだって早く冷蔵庫に入れなきゃ痛んでしまうし。
そんなことを考えあたふたしている私を他所に、アントーニョはじりじりと迫ってきていた。
ちなみに腰にはばっちり腕が回っている。
私はなるべく彼の顔を見ないように俯いていたのだが(見てしまったら、絶対に逃げられない)、ついにアントーニョの大きな手が頬に添えられてしまった。
お互いの目と目が合った瞬間、熱っぽい真剣な眼差しがそこにはあった。


「なぁ、えーやろ・・・?」


あぁ、そんな顔で見つめないで。
きっとアントーニョは私が断れないって知ってるんだ。


「なぁ、




お手上げです、きみには敵いません。
(あなたにかかれば私なんていとも簡単に陥落してしまう)


090923