「オィ、。寒ィからモゾモゾすんな」


先に眠っていたとばかり思っていたこのマンションの持ち主である高杉晋助は、ひどく不機嫌そう、というか不機嫌丸出しで私を睨んでいる。
そして居候の私は、睡眠を妨害してしまったのなら悪かったなと思い、大人しくごめん、と小さく謝った。
私と晋助は、まぁ色々とあって・・・その経緯は長いので端折るが、同棲してたりする。
しかも今はその寝室にある馬鹿デカいベッドの中で、これから普段より早い就寝に入ろうというところだった。
そう、いつもならこの前に色々・・・まぁ、ある訳だが、生憎と言うか幸いにしてと言うか、今日は月イチのアレが来ている為、大変不本意ながら(晋助が)そのままご就寝なはずだった。
だが、私は人より重いであろうあの痛みのせいで中々寝付けずに、モゾモゾしていたのだ。
本当、こういう時に男ってズルイなぁと思う。
何で女だけこんなに痛い思いしなくちゃいけないんだろう。


「う・・・だって」

「痛むのか?」

「・・・うん」

「・・・ったく、しょうがねぇ奴だな」


晋助は私の腰に触れると、優しく擦りだした。
その手つきが、普段の言動とは裏腹にびっくりするほど優しくて、思わず晋助の顔を凝視してしまったら「何見てんだよ」と睨まれた。
やっぱりいつもの晋助だった。
最初は、まさか睡眠を妨害された腹いせにこのまま事に及ぶつもりじゃ・・・と失礼なことを考えていたのだが、どうやら晋助なりに労わってくれているらしい。


「晋助」

「あァ?」

「・・・ありがと」

「あァ・・・」


いつも俺様なかんじで物凄く理不尽だし、不機嫌になると手を付けられないし、煙草嫌だって言うのに吸うし、もうこうれ強姦なのでは、と疑問を抱きたくなるようなこともするし、我儘で駄々っ子なのだが、こういったふと見せる優しい仕草に、不覚にもどきりとする。
こいつになら、何されても良いかな、と少しどころかかなり危ないことを思ってしまう。
我ながら、凄まじい神経をしていると思う。


「コイツが終わったら、また頑張ってもらわなきゃなんねーからなァ」

「馬鹿・・・」


ニタニタと意地悪く笑うと、額にそっと触れるだけのキスをしてきた。
あぁもう、馬鹿だけど、物凄く馬鹿だけど、でも、それでも良いかな、と思えるくらい愛してる。多分。
そんなこと、絶対言ってやらないけど(おそらく、言えば問答無用で何かが、おきる)。

晋助の献身のお陰かどうかは分からないが、先の痛みが嘘のそうに引き始めた。
そして、猛烈に睡魔が襲ってきた。
本当はこの珍しく優しい晋助をもっと見ておきたかったんだけど、私の抵抗も空しく瞼が重くなってきた。


「おやすみ、晋助」


それだけ言うと、私は心地良いまどろみの中、ゆるやかに意識を手放した。
晋助が何か言ったような気もするけど、それはまた明日聞けば良い。
明日も明後日も、嫌だと言ってもずっと側に居るのだから。





ララバイは泪に溶けてゆく


090328