「・・・高杉先生、何ですかこの手は」
「2人の時は晋助って呼べって言ってるだろ」
「晋助、この手は何?」
「、俺は今日の夕飯は和食が良い」
「それ昨日も聞いたけど」
さっきから話が全く噛み合っていない私達は教師と生徒であって、(一応)恋人であって、ここは学校の保健室であって、今、私は高杉先生によってベッドに押し倒されている。
色々と問題があるのだが、あえてここはスルーさせてもらう。
ちなみに扉にはしっかりと鍵が掛かっており、さらには「不在」の札も掛けてあるので誰かに邪魔をされることはまずないだろう。
傍から見れば中々にオイシイ状況なのだが、その会話には色気もクソもない。
支離滅裂なのはいつものことなので、全く問題はない。
高杉先生は、大体にして頭がぶっ飛んでいるのである(結論)。
どうでも良いけど、高杉先生は、顔は、まぁ、良い方だと思う。
だけど私に言わせれば、まるでただのでかい子供だ。
高杉先生はやたらとスキンシップが激しいが(嫌ではないが、もう少しTPOを考えて欲しい)、ただ単に構って欲しいだけなのだと気付くのに、出会ってからそれほど時間は掛からなかった。
そんなところも、惹かれている理由のひとつかもしれない。
・・・本人には絶対に言ってやらない、が。
ふと先生のデスクを見ると、帰り支度がばっちりしてあった。
一つ補足をするが、今は普通の生徒なら授業を受けるべき時間であり、まして授業を受け持ってはいない保険医とはいえ、一公務員の先生が帰って良い時間では、ない。
まぁこの部屋に居る時点で、私も同罪なのだが。
「・・・晋助もう帰るの?」
「あァ。いや、その前に・・・」
「・・・?」
「折角だから、楽しんでいこうぜ」
にやりと笑ったその顔は新しい玩具を見つけた子供のように楽しそうで、でもそこには獣のようないやらしい欲が滲んでいた。
今日はどうやらひどく機嫌が良いようなので、好きにさせてあげてもいいかな、なんて不覚にも思ってしまった。
しばし余所見をしていると、、と名前を呼ばれる。
晋助の指がすっと頬を撫で、あぁこれから始まるんだと感じ私はそっと目を閉じた。
授業開始のチャイムと同時に、私達はベッドに沈んだ。
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