久々に、昔馴染みに会った。
黒いもじゃもじゃと、銀色のもじゃもじゃと、あとヅラ。
この3人は昔とちっとも変わらず、恐ろしく騒がしくて、何故こいつ等はこんなにも元気なのかと軽く頭痛がした。
そして、ヅラは相変わらずヅラだった(て言ったら殴られた!)(女の子を殴るなんてサイテー!)。
で、今は喫茶店でぐだぐだ話をしている最中だったりする。
でもこのメンツだから、煩いことこの上ない(時々店員の刺さるような視線が、痛い)。
ちなみに、この時点で私はもう世間の目だったりさっきからせかせか動き回っている、それはそれは疲れた顔の店員さんへの配慮だったりの一切を、放棄している。
丁度昼時だったのだが、銀時は見ているだけでも恐ろしい巨大パフェ(私に言わせればもうあれはパフェではない)を食べ、ヅラは蕎麦で、辰馬は定食で、私は珈琲を飲んでいた。
最初はお互いの近況や世間話をしていたのだが、黙々とパフェを食べていた銀時がいきなり人の腕を掴むなり、「細ッ!」とか言い出したせいで私の食生活の話になった。
私は別に料理が出来ないわけでは、ない、決して。
かと言って、金がない訳でもない。
買ったり、外食に行ったり、しようと思えば幾らでも出来る。
要するに、億劫なのだ。
自分一人のために、わざわざ行動を起こすのが。
「何もさ、律儀に3食なんて食べなくても良いと思うのよ」
「いやいやいや、食べなくちゃダメだからね!お願いだよ本当、お前が倒れたら銀さん困るんだって」
「何故銀時が困るんだ?」
「じゃけー、おんしはちっこいんじゃー」
「うるさい。身長は関係ないですーこのもじゃが!」
「無視?無視なのか?」
「ププ、もじゃだってよー」
「銀時・・・お前も、もじゃだろう」
「・・・・・・」
ヅラの一言に酷く落ち込んだ銀時をよそに、私は珈琲を飲む。
あぁ、やっぱりここの珈琲は美味しい。
珈琲がこの世で一番楽で落ち着く食べ物だよ。
これだけでも、十分生きていけるわ。
その香ばしい喉越しの余韻に浸りながら、ちらりと銀時を見る。
あれは、納得いかないという顔だ。
「・・・あたしは、チョコと珈琲とビタミン剤があれば生きていけるよ」
「お前ねぇ・・・もうちっとマシなモン食えよ。ただでさえ細っこいのによぉ」
「だって・・・別にお腹空かないし」
「には困ったもんじゃのー」
「まぁ、なんとか生きてるし。大丈夫だよ」
銀時達と別れた後、何故か突然高杉に呼び出されたので仕方なく高杉の部屋に行った。
そう、仕方なく。
高杉が突発的に思い付き人を呼び出すのは、いつものことなのだ。
そして、その呼び出しに応じない時の報復の執拗さも。
勝手知った部屋に上がり、何か用があるのかと聞くと「特にない」と言われムっとしたので帰ろうとしたら腕を掴まれそれは叶わなかった。
本当に、何がしたいんだこの男は。
不機嫌丸出しの顔で睨み付けてると、高杉はさして気にも留めず、何度か見たことのある、嫌な笑みを浮かべた。
出た、高杉エロスマイル。
この顔を拝んで、何か良いことがあったためしは、一度もない。
そういう笑い方をした時は絶対裏があると知っているので帰ろうとした腕途端、もの凄い力で私の体が宙を舞い、気が付いた時はどさりという音と共にソファーに投げ飛ばされていた。
・・・おい、自分の彼女を放り投げる、もとい投げ飛ばす奴があるか。
非常に、不愉快だ。
しかしさらに不服なことに、今は腰をがっちりと掴まれ、あまつさえ、お高そうなソファーに座る高杉の膝の上に私は居る。
まずい、この状況は非常に、まずい。
「そういやヅラの奴が」
「ん?」
「お前に飯を食わせるように言ってたぜ」
「ふーん」
何とか抜け出す手はないかと、体を捻ってみたりさりげなく高杉の脇腹をくすぐってみたり色々試したけれど、全く効果ナシ。
一体、この細身の体のどこにそんな力だあるのだろう。
この高杉の機嫌の良さがさらに不安を掻き立てる材料でしかないのだが、次の一言で、それは決定的になった。
「つーことで、俺を食わせてやらァ」
「・・・は?」
「よーく味わえよ」
いや、意味が分からないから、と言う前に唇を塞がれてしまった。
入れさせるもんか!と固く口を閉ざしていたはずなのに、いつの間にかねっとりと、まるでその形を確かめるように高杉の舌に蹂躙される。
思いの外、いつものそれとは違いあまりにも優しくて、私はされるがままになっている。
が、しかし、高杉に一瞬でも『優しさ』なんて感じた自分が馬鹿であると後悔させるように、次の瞬間獣のように貪られて、どこか千切られたんじゃないかと思いながら私は息も絶え絶えに高杉を睨み付ける。
私の抗議の眼差しも虚しく、かえってそれに気を良くしたらいい高杉は、私を担ぎ寝室のベッドまで行くと、なんと放り投げた(ありえない!)。
(つくづく、この男の行動は分からない。)
そして、私の着ていた服は、もしかしたら紙切れか何かだったんじゃないかってくらい、あっという間に剥ぎ取られた。
しかし、高杉はいやらしい眼差しで舐めるように私を見下ろすだけ。
そう、ただそれだけなのだ。
ここまで、やっておいて、だ。
だが正直なところ、高杉に会うと、どうも身体が疼いて仕方がないのも事実だった。
本当に、認めたくはないけれど。
(あぁ、じれったい)
早く、この熱を何とかして欲しくて。
でも何とか出来るのは目の前のこの男しか居なくて。
今すぐ高杉が欲しくて仕方がないのに、この男ときたら本当に意地が悪い。
普段とは打て変わって、やんわりとしか触れてこない。
まるで焦らすかのような愛撫に耐えかねた私は、高杉の唇に噛み付いてやった。
「クク・・・食欲、出てきたかァ?」
「うるっ・・さ・・・い!」
「あァ・・・無駄口叩いてねーで食わせてやんだったなァ」
「お前なんか、嫌い、だっ・・・」
「は、そーかよ」
「あっ・・・!」
その後は、もう、・・・最悪だった。
嫌だ嫌だと言う私などお構いなにし、高杉は自分の気が済むまで散々私を貪るだけ貪ると、満足気に笑いとの隣にごろりと横になった。
実はただシたかっただけなんじゃないだろうか。
高杉をこんなに味わってしまった私は、もしかしたら食中毒とかで死んでしまうかもしれない。
物凄く嫌だ。高杉中毒で死ぬなんて。
「どうだァ、満腹になったかァ?」
「馬鹿杉・・・お前なんか食ったら絶対あたる」
「ひでー良いようだなァ?」
「だって、本当のこと・・・」
「よォ、まだ足りねーみてェだなァ」
「あっ・・ちょっと、まて・・・!」
逃げようとする腕をシーツに縫い止められ、目の前の顔はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。
この男から逃げることなど出来ないと分かっている私は、目の前の凶悪な男の機嫌を損ねないよう、白旗を揚げるべく大人しく高杉の首に腕を回した。
その後、食事を抜く度に高杉を食べていたら(てか、私が食べられてるんじゃ・・・?)私の身が持たないので、なるべく食事を摂るようにしようと固く決心したのだった。
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