不覚にも、風邪を引いてしまった。
体中が軋んで、特に、腕が痛い。
まるでみしみし音を立てているようで、このまま折れてしまうのでは、と思うほどだ。
寒気のせいか、頭痛もしてきた。
・・・これはもしかして、まじでやばいんじゃないだろうか。
一人暮らしというのは気楽で良いのだが、こういう時ばかりはどうにも不便でならない。
薬を飲もうにも、如何せん、布団から出れない。
用は、ものっすごい、ダルい。
風邪なんてそうそう引くものでもないので気にもしなかったが、改めて風邪とい病気の恐ろしさ(うん、これはまじでやばいね)を知った今日だった。
友人で万屋屋を営んでいる男に助けを求めようかとも思ったが、布団から出れなければ連絡も出来ない。
どうしたものかと思ったが、どうしようもないので諦めて寝ることにした。
一体どのくらい寝ていたのか、外は日が暮れて薄暗かった。
しかもやたら寒い。多分。
多分、というのは、今は布団の中でぬくぬくしているが、顔が冷たくなっているからだ。
暗い部屋の中で一人で寝ていると、何となく、今まであまり感じたことのなかった気持ちがじわり、じわりと侵食してきた。
それは言葉に出してしまうときっとどうしようもなくなってしまうから、敢えて言わない。
けれどこれはきっと・・・
私らしくもない。
これは全て熱のせいだ。
無性にあの馬鹿に会いたくなったのも、一瞬でも恋しいだなんて思ってしまったのも、熱のせいにしてしまえば良い。
朦朧とする意識の中で、一瞬幻聴かと思ったのだが、だが確かに、あいつの声がした。
「」
「たか、すぎ・・・?」
「俺以外に誰が居んだよ」
病人が目の前に居るというのに、そんなことにはお構いなしに煙管をふかすその男は、高杉だ。
相変わらず派手な着物を気崩している高杉は、珍しいものでも見るように、そして楽しげに私を見ている。
あぁ、もうこいつ本当に高杉なんだな、なんかむかつく。
あれ、でもなんか今日は高杉がすごくかっこよく見えるんだけど・・・これもきっと熱のせいだ、そう、熱のせい。
「私は・・・別に、お前なんかに、会いたくなんてなかった、から」
「あァ、そーかよ」
いつものように意地悪く笑うと、ひやりと冷たい手が私の額をそっと撫でた。
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